AI時代に求められるSE像

中小企業診断士・ITストラテジストの富田です。今回は、最近話題のAIについて述べたいと思います。

10年後になくなる職業

英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文『雇用の未来?コンピューター化によって仕事は失われるのか』が話題となりました。この論文では、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いと述べています。AIの発展により、これまでルーチン化できなかった仕事もルーチン化できるようになり、ルーチン化できるような仕事はAIにとってかわられるとのこと。人とまったく同じ作業をするのであれば、機械の方がはるかに速く正確で、コストも安いです。とってかわられるのは当然の結果と思います。

では、「SE」という職業はどうでしょうか。私は、単純な下請け作業をする「SE」「プログラマー」も、失われる職業の一つだと考えています。2020年に小学校でプログラミングが必修化されます。プログラムを組める能力は、もはや特別な能力ではなくなります。EUC(エンドユーザーコンピューティング)も発展し、ユーザー自身が自由にシステムを作れるようになります。さまざまクラウドサービスが登場し、AIにより自動化できる業務の範囲も広がり、「作る」のではなく「使う」のが主流になります。自分のやりたいことをシステム化するだけであれば、自分で出来てしまうのです。ゆえに単純に顧客の要望通りにシステム構築を行うだけのSEは、職を失うと考えます。

AI時代に求められるSE像

では、AI時代に求められるSE像とは何でしょうか?私は「提案できるSE」だと考えます。先に述べたように、顧客がやりたいことを自身でシステム化できる環境は整いつつあります。しかし、顧客の「やりたいこと」が、本来の目的に適合してなかった場合はどうでしょうか。真の課題が何なのか、顧客自身が気づいてないことは往々にしてあります。「やりたいこと」が本来の目的に適合していないのであれば、それをシステム化しても意味がありません。顧客と顔を合わせて議論し、さまざまな背景や要因から真の課題を導き出し、最適な解決策を提案すること───それは人にしかできません。時には、顧客のやりたいことを突っぱねるような提案も必要です。そこには人同士の信頼関係が必要となります。人と信頼関係を築くこと、それも人にしかできません。

AIにはできない仕事、それが「提案」なのだと思います。いわれたものをただ作るだけ(=単純な下請け作業)なら、人である必要はありません。そこに提供価値はありません。人でしかできない価値を提供するからこそ、人がその仕事をする意味があるのです。そこに人の絶対的な強みがあります。必要なのは「提案力」なのです。

提案力を身に付けるためには

では、提案力を身に付けるにはどうすればよいでしょうか?まず、提案の前提となる知識が必要です。技術的な知識が必要なことは勿論ですが、それを課題解決につなげられるような経営知識も必要となります。IT業界にいる人は、どうしても技術的な知識に偏りがちな傾向があると感じています。より広くさまざま知識を身に付けましょう。そのための方法は人それぞれかと思います。『本を読む』『セミナーに参加する』『専門家に教えを乞う』などいろいろあると思いますが、いずれにしても危機感と目的意識をもって取り組むことが重要です。

「今の仕事が忙しくて勉強する時間はない」「今の仕事ができていれば十分」という声をよく耳にしますが、将来的にその「今の仕事」がなくなったらどうするのでしょうか。急に新しい知識を身に付けようとしても限界があります。日々の努力の積み重ねでしかありません。しかし、ただ知識を身に付けるだけでは提案に結び付きません。提案をするには、顧客にとって本当に必要なものは何なのか、真の課題はどこにあるのかを探る力が必要です。こちらが答えを出すのではなく、顧客自身に気づいてもらう必要があります。そのためには、親身になって顧客の話を傾聴し、異なる側面より質問を投げかけ、顧客の凝り固まった頭をほぐします。そうすることで、顧客はあらたな発想で物事を考えられるようになり、気づきが生まれて、真の課題が明らかとなります。この「異なる側面より質問を投げかける」のに、幅広い知識が必要となるのです。真の課題が明らかになれば、それを解決するための技術を提案できます。そこに価値が生まれます。

まとめ

第一次産業革命では、蒸気機関を動力とした力織機の発明により、手工業者が職を失いました。第二次産業革命では、自動車の発明により、馬車の御者が職を失いました。第三次産業革命では、自動交換機の開発により、電話交換手が職を失いました。AIが発展しつつある今は、第四次産業革命だといわれています。これまでの歴史を見るように、産業構造の変化によりさまざまな職業が失われてきましたが、それによって生産性は向上し、人々の暮らしは豊かになりました。AIによる第四次産業革命により、今後、多数の職業が失われると思います。しかし、AIは敵ではなく道具です。AIを道具として活用し、人にしかできない提案をし、あらたな価値を提供できるSEこそが、生き残れるのではないでしょうか。

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