IT業界で目指す自己実現（後編）／株式会社アスペア　代表取締役・加藤雄一

「働き方改革」として、現代社会のライフスタイルに合った多様な働き方を実践する企業が増えています。今回ご紹介する株式会社アスペア様もその一社。とはいえ、同社はずっと以前からフレックスタイム制の導入や、有給・産休・育休を取得しやすいようにチーム制構築など、社員の働きやすい環境づくりに力を注いでいます。代表取締役の加藤雄一さんから、創業の経緯や現在の取り組みなどを伺いました。今回はその後編、リーマンショックを乗り越え、現在の会社の立ち位置をご紹介します。

＜前編はこちら「IT業界をめざす自己実現（前編）」＞

悠々自適の会長職…のはずが。

バブル崩壊で大打撃を受けた当社ですが、知り合いのコネクションをたどり、なんとか経営を立て直し、会社は少しずつ平穏を取り戻しました。従業員も少しずつ増え、事業部を任せられる人材も集まり、組織として大きく育っていく手ごたえも感じ始めていました。

そこで、私は経営を社員に任せ、社長を辞して会長に就任。悠々自適に暮らしながら、「若かりし頃に想いを馳せた飲食店経営に挑むことも一興」と考えていた矢先、再び経営が揺らぐ出来事が起こります。リーマンショックによる景気の急降下です。経営の先行きは一気に不透明となり、私は経営の舵を取るために社長へと復帰。結果的に会社として苦難を乗り越えたのですが、ここで強い決意を抱きます。「社員が安心して働き続けられる場所を構築しなければ」。それまでも社員目線で経営に挑んでいたつもりですが、もっと明確な形で「働きやすさ」「安心・安全」を組み上げようと思い立ったのです。

女性雇用を促進させる町田ラボ

現在、2000年に新卒で入社した女性エンジニアが在籍しています。当社に入社後、結婚、出産を経ているママさんエンジニアです。彼女が産休育休から復帰した際、客先常駐の仕事では家庭との両立が難しいという問題がありました。そこで、「町田ラボ」という取り組みを開始。都心の客先常駐で働くスタイルとは別に、社内持ち帰り案件として、プレミアム・タイムセールECサイトのシステム開発や、スポーツバイク出版社のWebサイト制作・保守・クラウドサーバー管理などを一手に引き受けています。

町田ラボではママさんエンジニアが3名在籍。基本的に残業なしで、17時定時で家庭との両立を図ってもらっています。私も子育てを経験しましたが、急な発熱や体調不良など本当に大変です。そんなときは、「すぐに帰っていいよ」という体制で、上司や周囲のメンバーでサポートし合う仕組みを作り上げています。

とはいえ、時間は有限です。「定時で業務を終了する」ためには、日中の生産性を高める必要があります。「残業ができないので、間に合いませんでした」ではビジネスとして成り立ちません。そのため、個人のスキルや組織としてのチームワークなど、向上させるべき側面は多々ありますが、幸い、高いレベルでビジネスに取り組めるメンバーが集っていることもあり、町田ラボは順調な運営に成功しています。今後は時短勤務社員などを含めて町田ラボのメンバーを増やし、より協力・調整しやすい組織を作り、さらに多くの取引先に貢献していきたいと考えています。

社員一人ひとりの自己実現を大切にする組織

当社の環境としては、客先常駐の社員、町田ラボの通常勤務社員、残業なしのママさん社員など、同じ会社内でもさまざまな境遇に分かれています。そこで、社内コミュニティの仕組みも作っています。毎月1回の社内勉強会では、新しいテクノロジーやトレンドなどを意見交換。ゲーミフィケーションも取り入れ、みんなでワイワイと盛り上がったりもしています。技術書籍は会社費用で買い放題で、外部研修参加費用の支援も実施しています。

年月を重ねるたびに、生活や志向は変わっていくもの。私自身、初めての社会人、会社の立ち上げ、経営危機、社長辞任からの復帰など、さまざまな人生を送ってきたなかで、自己実現とは思い通りにいかないものであり、千差万別であることを思い知りました。アスペアは派手な会社ではありませんが、社員一人ひとりが自己実現できる会社でありたいと願っています。エンジニアとしてのスキルアップ、ママさんエンジニアとして家庭との両立など、その仕組みを作ることは、私の使命です。そして、アスペアが存在する意義とも感じています。

今後は、ソフトウェア領域で自社オリジナルの商品を作りたいと考えています。「自分の手で製品づくりを成し遂げたい」などのスタンスを持つエンジニアの自己実現の場として、さらに社内体制に磨きをかけていきたいです。